殺処分0の周辺 引き取り拒否は動物を救うのか?

2015/10/02

昨今、ペットの「殺処分ゼロ」運動が盛んです。芸能人の団体立ち上げなどもあり、犬猫に無縁な人々もこの問題を目にする機会が増えてきました。殺処分ゼロはペットを想うすべての人々の願いですが、拙速な殺処分ゼロ運動は意に反して動物に苦しみを与えかねないため、その具体的な方策には熟慮が必要です。

引き取り拒否は動物を救うのか?

先般の動愛法改正によって、終生飼養の飼い主責任が明記され、自治体は高齢や病気を理由とした犬猫の引き取りを拒否することが可能になりました。確かに引き取り拒否は殺処分数減少に直結しますが、その後の動物たちの行方まで想像する人がどれだけいるでしょうか。

現状を知らない人たちにとっては、「殺処分ゼロ」という言葉は非常に魅力的で実現可能と映るようですが、最近そういった声に押されて、引き取り拒否だけではなく、現場で放置を示唆するような言動をとる自治体もあることは、動物福祉的にも見逃すことはできません。

私たちは20年以上にわたり、様々な動物関係の相談を受けてきましたが、中でも最も多い「飼えなくなった」という相談に対しては、正直ほとんど無力でした。初めから「もう飼うつもりがない」ことを前提に相談してくる人たちに終生飼養をいくら訴えても、結局は「飼えない」のです。

人間の子どもに対する虐待と動物虐待の構造には多くの共通点があり、自治体での引き取り拒否は、動物の遺棄・虐待・致死につながる危険性を常にはらんでいます。厄介ものとなった動物が、児童相談所の判断が甘く、保護しなかった子どもと似たような結末をたどることは想像に難くありません。

自治体の引き取り拒否を求める人たちの多くは、説得や叱責により、飼い主が改心すると信じているようですが、引き取りを拒まれた動物たちを待っているのは、多くは遺棄やネグレクトであり、それは安楽殺より酷い運命であると言えるのではないでしょうか。 長い人生のうちには、病気や経済問題等、不測の事態も起こり得ます。飼い続けられない事態に陥り引き取りを求めてくる人に終生飼養を強制するには、あまりに酷な場合もあるでしょう。

追跡調査に時間や労力を割くことなどできない自治体の実情を考えれば、殺処分数のみを問題視する今の日本の「殺処分ゼロ」運動には、強い危機感を持たざるを得ません。最近日本でも盛んに紹介されるようになったティアハイムにおいても、ある日本人関係者に引き取りに関する質問をしたところ、「ティアハイムでは基本的にすべて引き取る。飼い主に説教はするが、引き取らなければ動物はアンダーグラウンドに潜るだけだから」という返答があり、やはり闇から闇に消える動物たちを憂慮していることがよくわかりました。

では、日本でも、飼育放棄や自治体から引き取り拒否された動物をすべて引き取るノーキルシェルター(所謂ティアハイム)を作れば問題が解決するのでしょうか? もちろん、名実ともに動物福祉に配慮された素晴らしい施設であれば、救われる動物達は確実に増えるでしょう。しかし、寄付の習慣もなく、ペットショップは乱立し、かつ、殺処分ゼロを目指す上で基本中の基本である不妊去勢手術が徹底されていない日本において、いくらシェルターを作ったとしても、それは新たな捨て場を提供するだけであり、いずれ維持困難に陥ることは容易に想像できます。シェルター建設で問題を解決するには、あまりにも動物の数が多過ぎるのです。

たとえ時間はかかっても、繁殖制限を柱とした適正飼養や適正譲渡、さらには生体販売の禁止等が徹底・維持されれば、殺処分数は自然と減少し、真に不幸な動物も減っていきます。引き取り拒否や安易な譲渡といった強引な方法で数字上の「殺処分ゼロ」を目指すことが本当に動物を救うことになるのか、響きのよいスローガンに流されることなく、今一度立ち止まり、考えてみるべきではないでしょうか。

アニマルウェルフェア推進ネットワーク 寄稿

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