事例:沖縄県 拓也くん死亡事件

1970/01/01


2001年2月17日






2月27日



5月6日





5月11日
4~5日後






6月9日午後
Tさんが飼い犬の散歩中、卓也君が突然飛びついてくる。
(ゴールデンラブラドール系の雑種、まだ1歳前後で元気がよく、名前を拓也と名付けました。)
びっくりした飼い犬も攻撃したため、お互いの犬歯が食い込み、拓也君も傷を負い、ひどい皮膚病にもかかっていました。
愛護センターに問い合わせをしたが、該当の犬はいないということで、そのまま放っておくことも出来ず、かかりつけの獣医院(N動物病院とは別です)へ連れて行く。応急手当をしていただき、しばらく入院という形で預かっていただく。皮膚の状態は改善されてきていた。 

知人宅に一時預かりをしてもらう。
継続して皮膚病の治療と、ワクチンを早急にしていただくことを目的とし、経済的負担はTさんがする、という条件。

TさんがN動物病院へ行き、担当医師にお会いし、皮膚病が治らないとワクチンは出来ないのかと聞きましたら「そんなことはありません」という答え。その場で犬を保護したいきさつをお話しし、入院期間はワクチンの免疫が出来る約一ヶ月くらい、という目安で入院を了承していただきました。ワクチンがすんでいないと里親を捜せないため、念を入れてワクチンの事をお願いする。
その後、静岡のほうで里親に出す手配をする。
 
Tさん関東へ引越し
病院へ電話
既に卓也君は病院に来ていて、とても元気でいるとのこと。
その際にも、受付の方にワクチンのことをくれぐれもお願いし、その後静岡の方へ連れて行く旨も話した。卓也君に関してはTさんが全て最後まで経済的にも責任を持つので宜しくお願いします、と念入りにお願いしました。

1ヶ月近くになるころ、拓也君の引き取りと、空港にて名古屋便に貨物として乗せていただくことも了承していただきました。

突然の院長からの電話で、拓也君がパルボウィルスにかかり、早朝亡くなっていたと連絡がある。
院長は、ワクチンは既にすんでいると思っていたので1回もしていないということでした。

Tさんは沖縄県獣医師会を通して、N動物病院に以下の質問をしました。

1.何故ワクチンをしていると、証明書もないのに思ったのか。ただ忘れていただけなのか。
2.何のための入院だと思われていたのか。
3.何故、曖昧な点を確認の電話をしていただけなかったのか。
4.パルボウィルス感染患者が来院し、そのご拓ちゃんにどのような対応をしたのか。すぐに隔離、等、最善を尽くしたのか。(注***後に、感染経路は院内ではなく、散歩中にパルボウイルスに感染しやすい場所があり、そこを通ったためではないかという事がわかりました)
5.何故病院を閉鎖しなかったのか。
6.拓ちゃんの責任者、保護者としての私に、何故、すぐ、感染したことを電話しなかったのか。
7.私の了承なしに、何故、勝手に合同葬に出したのか。(実際には引き取りが間に合い、合同葬は避けられた)
8.獣医師としての、100%過失を認めておられるのか。

以上、きちんとした調査をしていただき、カルテの開示もお願いしたいと思います。

 『私は、ある早朝、行きずりで出会っただけの犬にしかすぎませんでしたが、1匹の犬を救済するために、物理的、時間的にも大変ハードではありましたが、私なり全力で対応したつもりです。その為に関わっていただいた何人かの方々のお力添えもあり、拓ちゃんはフワフワの毛が生え替わり元気に、ワクチンさえしていれば100%幸せな生活が待っていました。
 拓ちゃんは、決して野良犬でも、捨て犬でもない、私が責任者として預けたのです。誰にも看取られず、つらく、苦しい思いをしながら、何の罪もなかったのに寂しく死んでいった無念さを思うと、天災でも事故でもない、医師の単純な過失を憎んでも憎みきれません。
 毎日の仕事の中で、命ある生身の動物達を物としての見方しかしていない、獣医師の鈍感になった感覚からは、日常茶飯事のこととして一笑に付す出来事なのでしょうか。
 私達飼い主が、細心の注意と愛情を込めて動物と向き合っていることを、理解されているのでしょうか。
 私はこの出来事を、日本の最南端の小さな、名もない動物病院の出来事ではなく、プロの獣医師の姿勢、モラルの在り方について、絶対に許すことが出来ないと思っています。
 私の考えに落ち度があるとしたら、それは、忙しく時間がなかった為に、文書に残していないということです。全て、電話にて口頭だったということは私のミスでもあります。
 そして、私の善意の押しつけと自己満足のために、拓ちゃんを保護したことが裏目に出てしまって、本当に申し訳なく思っています。あのまま、見て見ぬ振りをし、病院へ連れて行かなければ…、と自問自答しています。
 ワクチンさえしていれば、いつか綺麗な毛が生えゆったりとお散歩し、100%幸せな生活を保障されていた拓ちゃんの無念さと、私の気持ちをお酌み取りいただき、、十分で厳正な調査をお願いし、納得行く回答を頂きたく思います。
 拓ちゃんのお骨は、現在静岡の知人宅にて供養していただいております。合同葬で依頼されていましたが、急いで見に行っていただきましたら、まだ間に合ったので個別にしていもらいました。そして、ずっとさまよい続けた、短かったであろう拓ちゃんの魂をこれ以上さまよわせないために、お預けすることにしました。
 非常に野良犬、捨て犬の多い沖縄で、モラルアップ啓発を、命ある動物に関わる獣医師会をとおして、切にお願いいたします。 』             
(Tさんが獣医師会にあてた手紙より)

Tさんの質問に対するN動物病院 担当医師の回答

1.何故ワクチンをしていると、証明書もないのに思ったのか。ただ忘れていただけなのか。
回答:当院にらいい以前にワクチンを打っていなかったということは承知しておりました。依頼を受けたことも覚えております。Tさんからの依頼を受けてからしばらくたってから、拓也君が代理の方と来院した際、代理の方からワクチンの依頼はなく、皮膚病の継続治療を行いました。後日ワクチンをうとうとしたときに緊急の診療が入ったこと等で、ワクチンが延期になり、ワクチン未接種になりました。
*来院時の拓也くんは全身性のニキビダニ症で全身の皮膚は赤く、脱毛、ふけがひどく悪臭を放つ状態で、院内が臭うほどでした。まず治療は忙しい診療時間内にスタッフ2人係で3時間かけて全身の毛刈りとシャンプーを行いました。においが落ち着くまでには一週間ほどかかりました。

2.何のための入院だと思われていたのか。
回答:入院の理由は、Tさんは引越しのため拓也君の保護ができず、また今まで預けていた知り合いにはこれ以上預けたくないということで、本来皮膚病での入院の必要はありませんが、しかたなく入院という形になりました。

3.何故、曖昧な点を確認の電話をしていただけなかったのか。
回答:転居後新しい住所をすぐに連絡するとの事でしたが、拓也君が入院してから5日間は飼い主さんから何の連絡もなく、連絡先不明の期間もありました。拓ちゃんの責任者、保護者としての私に、なぜ、すぐ、感染したことを電話したなったのか。


4.パルボウィルス感染患者が来院し、そのご拓ちゃんにどのような対応をしたのか。すぐに隔離、等、最善を尽くしたのか。
回答:パルボなどの伝染病患者は通常入院はさせておりません。他の犬との接触を避けるため、伝染病患者の治療は診療時間外での通院治療を行っています。

5.何故病院を閉鎖しなかったのか。
回答:通常はどこの病院でも伝染病の発生で病院を閉鎖することはないと思います。当院でも伝染病発生時の病院の閉鎖は行っておりません。

6.拓ちゃんの責任者、保護者としての私に、なぜ、すぐ、感染したことを電話したなったのか。
回答:感染の連絡はすぐにすべきでしたが、忙しさもあって連絡する機会を逃してしまいました。

7.私の了承なしに、何故、勝手に合同葬に出したのか。
回答:Tさんは拓也君を引き取りにくることができないと判断し、一般的な合同葬(15,000円)を病院で選択しました。

8.獣医師としての、100%過失を認めておられるのか。
回答:今回の拓也君の件では、獣医師として動物愛護の精神で皮膚病の治療、保護に徹してきましたが、病院のスペースの問題、忙しい中での保護権への対応など、Tさんとの距離的、時間的ずれ等の問題でコミュニケーションがうまくとれず事故がおこってしまいました獣医師として責任は痛感しております。今後もTさんに対する保障等、誠意を持って対応していきたいと思っております。

事実確認会の申し入れは拒否されました。公開質問状を作成し、送付いたします。

2001年10月15日

Tさんの拓哉死亡に関わる公開質問状

 保護者・tさんから、本年5月9日、ワクチン接種を目的とする入院中にオス犬・拓哉くんが突然死亡した件で、当NPO法人アニマルライツセンターに相談がありました。

 先に郵送いたしました、事実確認会開催にご同意いただけなかったため、この公開質問状で事実確認をさせていただきます。

一、ワクチン接種をしなかった理由についてですが、当初は保護者・tさんに対して「ワクチンはもう済んでいるものと思い接種をしなかった」との説明でした。ところが、沖縄県獣医師会を交えた話し合いの場では、「急患や他の患者の治療で忙しく、ワクチンをすることができなかった」と変わりました。これら二つの説明はあきらかに相違していますが、どういう事なのでしょうか?お答え下さい。

一、元々はワクチンの接種を目的とした入院であったのに、開示されたカルテのどの箇所にも「未ワクチン」の文字が記されていないのはどうしてでしょうか?お答え下さい。

一、ワクチン接種をしていない犬を何故、パルボウィルスにかかりやすいという散歩道に、必要な注意を怠って連れて行かれたのか?お答え下さい。

一、ワクチン接種をしていない、また、重い皮膚病にかかっていて免疫力が低下している犬に対し、保護者・tさんに事前の了解もなく麻酔をかけ、去勢手術を行ったのは何故でしょうか。

一、パルボウィルスにかかったのであれば、そのための処方はきちんとしたのでしょうか?できるだけ詳細にお教え下さい。

一、ワクチン接種の確認や去勢手術の事前了承、或いはその他の治療行為に際して、保護者・tさんに連絡を怠ったのはどうしてでしょうか?お答え下さい。

以上

 誠意あるご回答を、この書面を受け取ってから一週間以内にお寄せ下さい。

 

11月2日、公開質問状に対する回答をいただきましたので、下記に公表いたします。

アニマルライツセンター御中

○○さんの件に関する回答をお送りいたします。

○○拓哉君の件、公開質問状に対する回答

公開質問状に対し、以下の通りお答えいたします。

1.ワクチンをしなかった理由

前回までの答えの中でも述べたと思いますが、拓哉君が来院した時点で、ワクチンを打たれていなかったことは承知しておりました。私が勘違いしていたというのは拓哉君を預かってから当院でワクチンを打ったのだと勘違いしていたということです。拓哉君ワクチン未接種は確認していました。電話での説明のため、○○さんが誤解されたのだと思います。

しかし、私をはじめスタッフ全員が拓哉君にワクチンを接種していたと思い込んでいたのはとても不自然なので、再度カルテのチェックやスタッフへの調査をしたところ、カルテでは5月18日に体重、体温、心拍の検査をしていますが、その他は何の記載もありません。とても不自然ですが、夏場の忙しさを考えると、ホテルなどや入院などすぐに会計に送る必要のないカルテは、診療が落ち着いてから記入することがありますので、おそらく5月18日に拓哉君へのワクチン接種が行われ、カルテへの記入だけが漏れてしまい、私どもの記憶とカルテの食い違いが生じたのでは、と思われます。


2.他の病院ではどうかわかりませんが、当院ではワクチンをしていない患者のカルテに「未ワクチン」と記載するようなことはしておりません。

3.拓哉君が病院に来たときの状況は、体臭も極めてひどく、暴れる吠えるもひどい状態で、その悪臭と吠える声で病院の診療全体に影響があるほど大変でした。皮膚病治療として、全身の毛刈り、数回のシャンプーを行い、行動に対しては獣医師としての私の判断で去勢をさせていただきました。その時点では○○さんからは新しい住所の連絡がありませんでしたので、わたしから確認の連絡を取ることはできない状況でしたが、私としては去勢の必要性を強く感じていたこと、犬や猫の里親探しをする際は去勢、避妊は是非行うべきものであることなどから、○○さんへの了解は得られるものだと考えていました。

もちろん、確認なしで私の判断でしたことでしたので、去勢の料金はいただかないつもりでした。

4.なぜ散歩に連れて行ったのか

皮膚の治療、去勢などを行っても拓哉君の無駄吠え、暴れるなどの行動はあまり改善できませんでしたので、病院内でもお座り、待て、付けなどのトレーニングも行いました。しかし、効果はあまりありませんでした。最終的に散歩にでも連れて行けば、ストレス解消になってもう少し落ち着くのではないかと考え、何度か海岸まで散歩に行きました。通常、ホテルや入院で預かる場合は逃亡の危険性を避けるため、病院外への散歩は行っていません。例外的ですが、拓哉君のことを考えて行ったことでした。

5.パルボ感染症後の治療について

治療についてはカルテに書いてあるとおりの治療を行っております。治療は当院で行っている通常の治療を行いました。治療開始時に白血球の低下が認められなかったこと、注射を嫌がってかなり暴れるほどだったことなどから、すぐ快復するのではと思われました。実際、治療開始後食欲が出てきました。所が6月8日に急に状態が悪化し、死に至りました。

パルボウィルス感染症は死亡率の高い病気ですが、当院の症例でも、発見が早ければかなり高い確率で治癒しています。しかしながら、特に寄生虫などの混合感染で免疫力が抑制されている場合は、早期に発見できていて元気があっても、死亡に至る例があります。拓哉君もこのケースだと思います。

もちろんワクチンを受けていても、重度のニキビダニの発生のある場合は免疫ができにくい状態です。

6.連絡不足について

去勢の連絡については上記のとおりです。

ホテルなどでペットを預かる場合、何らかの疾患の発生があったときには飼い主の確認を待たずに治療を行うのが通常です。しかしながら病気についての報告が送れてしまったことについてはお詫びいたします。

※今回の拓哉君の件は、入院室の十分な広さがないためお断りするべきでしたが、引越などで拓哉君の世話ができない○○さんの訴えで、かなり強引に受け入れを強制されました。そのために通常は受け入れないワクチン未接種の犬の受け入れや、病院外への散歩など、例外的なことを行ってきました。そのような中で拓哉君の皮膚の治療、しつけなどの指導など、スタッフ全員で当たってきました。良くなってきた皮膚のこと、付けやお座りができたことも、共に喜んでおりました。そのようなことは○○さんに知る由もなく、最終的な結果だけから全てを判断されて、全てのことに対して当院が悪意に満ちているかのような表現をされていることに対して、大変残念に思います。○○さんは100パーセント獣医師としての私に責任があるとおっしゃっていました。私も獣医師としての責任をいつも担っていたいと考える者ですが、獣医診療は、獣医師、スタッフ、飼い主との協力で成り立つもので、中でも重度の皮膚病となると飼い主の協力は欠くことができません。拓哉君のケースでは飼い主の協力が得られず、最悪の結果になった例だと思っています。


ARCの立場の再確認

私たちは、いくつかの例外を除き、原則として動物をペットとして飼育することに賛成ではありません。人が他の人から支配されたり、隷属を強いられることが容認されないのと同様、人が他の動物たちを支配したり隷属させたりする関係自体に賛成できないからです。 
今日の、動物病院の乱立は、常軌を逸したペットブームと表裏一体の関係にあり、いずれもすみやかに終息に向かうことを強く希望しています。
さらに、飼い主に対しても、その動物への責任を追っているのは自分自身であることを再認識し、冷静に治療前・治療後説明を求めることや、預ける際のリスクの認知、動物にとってなにが一番よいのかの判断は自分が行うことなどを徹底してください。


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